第1話 「誰の仕業?」

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「これで……」 変化が起きたのは、トカゲの血をスポイトで垂らした時でした。 緑色の液体が瞬時に固体に変わり、フラスコから黒い煙がもうもうと立ち込めたのです。 クールビューティーと噂されている私も慌てましたよ。 心臓が跳ね上がる頃にはもう遅かったらしく、フラスコから溢れる煙は弾けて小さな爆発をもたらし、無残にも前髪はこんがりちりちりです。 はぁ……。喘ぐようなため息。 調合失敗です。 トカゲの血の比率を間違えたのが原因かと思われます。 でもでもでも、1つだけ言わせてくださいな。 この調合は難度が高く、だから失敗もします。だから博識の魔女だって失敗するものです。だから私の腕が悪い証明にはなりません。だから違うのです、いろいろと。 そもそもですよ。 おばあちゃんが生前残した調合例を書き綴った本のせいです。 『トカゲの血──大さじいっぱい』 緻密な作業が要求される調合にもかかわらず、これしか書かれていません。どんだけアバウトなんですか!? と、思う私の気持ちも汲み取って欲しかったですよー、天国のおばあちゃん。
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