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お客さんは顔面蒼白の女性でした。ふわふわとした深い赤色のドレスを身に纏い、胸元を飾る卵のような黒ダイヤが反射して私を美しく写し出していました。なかなか裕福な女性ですね。
その顔はベールで隠されていますが、青い顔がちらりと覗いています。
その女性の背中には三つ編みの女の子がぐったりとしていました。
「どういったご用件でしょう?」
そう言いながらも、私は薄々、この場の異常性を肌で感じ取っていたのです。
女性に担がれている三つ編みがトレードマークの女の子は、細かく揺れ動いています。痙攣に近い動きでした。ってか痙攣でしょう? それ。
あやや……ついには死に掛けた甲殻類のように泡まで吹き出している始末。ご愁傷様です。ちーん。
「子供を助けてください!」
「お引き取りください」
即答です。血も涙もありません。
みるみる内に女性の顔は絶望に満ちた顔に変化しました。
下っ端の魔女に何をしろというのですか、お医者さまに見せたほうが確実です。
「そんな……」細い声で呟いています。
「お医者さまの所に行ったのですか?」
「はい、だけど何もできないと言われました。魔力によるものだと」
それを聞いて溜息を吐きます。
魔力の介入によるものなら私の専門です。美人魔女として、なんとかしなくてはなりません。
「分りました。ここに寝かしてください」
「ありがとうございます!」
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