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この場所に昔からあり、薄汚れてる典型的な流行らない近所のラーメン屋に入ると、テーブルに腰かけた。
いかにも何をやっても失敗しそうな顔をの店主が、「いらっしゃい」と言いながら水とオシボリを持って来る。
「ご注文は?」
「ラーメン」
「みそ?しょうゆ?」
「ラーメン」
「だから、みそ?しょうゆ?」店主が壁に貼ってある手書きのメニューを指をさす。
僕は愕然とした。
「ラーメン」がないのだ。
「ラーメンないんですか?」僕の唇は微かに震えている。
「ありますよ?みそとしょうゆ」
違う!と僕は今にも叫びたい衝動に襲われたが、じっと耐え、血の味がする水を一気に飲み干し気持ちを落ちつかせ、壁のメニューをもう一度見た。
何度見ても、「みそラーメン」と「しょうゆラーメン」はあるのに、「ラーメン」はない。「カレー」があるのに、「ラーメン」がない。
「僕は…ラーメンが食べたいんです」不思議とこんな時は涙が出て来ないものだ。
「うちはみそが美味しいよ?」
僕は席を立ち、店から出た。
「それ」はまだ僕の内側を何回も鈍器で叩いていた。
「それ」の支配から解放されるため、僕は一人「ラーメン」を求め静かな街をさ迷い始めた。
おしまい
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