40人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
それから数日後、仕事がなかなか片付かず、会社で一人残業していたある日、彼もお客様の家に長居していたらしく、遅くに会社に戻ってきた。
初めて彼と会社で2人きり。
ぁたしの中で変な緊張感が漂った。
別に何もされないし、してこないこともわかっていたけれど、男の人と2人きりという空間が無駄な緊張を呼んだ。
そんな中、彼はいつも通り自分のデスクに座り、いつも通りタバコを吹かしながら日報を書いていた。
ぁたしも緊張からか、タバコをいつもの倍ぐらいのスピードで吸っては、次のタバコに火を付けて黙々と書類を書いていた。
ふと…
「池田さん、今日も遅くまで頑張ってたの?偉いね~」
早々と日報を書き終えた彼が、上司の高そうな椅子に座りながら偉そうにふんぞり返ってぁたしを見て言った。
「見つかったら怒られるよ~(笑)」
なんとなく会話を流して、ぁたしは再び書類に視線を落とした。
「俺も早くこの椅子に座りてぇなぁ~」
どことなく愛おしそうに椅子を撫でながらグルグルと周り、遊んでいる彼を見て、思わず笑った。
「なぁんだ、池田さん、笑ってた方がいいじゃん。なんでいつも怖い顔してるのよ?」
まさかの打撃に、動揺した。
それでも、彼はまだグルグル周り、仕舞には、気持ち悪い~とグッタリしていた。
それからも何かと他愛もない話をしたりして、仕事の愚痴を言い合った。
帰り際、一緒に食事に誘われたが、なぜか意味のない緊張をして、つい断った。
これが、初めて彼と2人で長い会話をした時だった。
最初のコメントを投稿しよう!