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ドアを開けたら、何かに当たったような音がした。
ガサリ、と。
半開きのドアから手を伸ばして、妨げの正体を持ち上げる。
──大きな袋。
それに見覚えがあった。
その中には…きちんと整ったスーツが入れられていた。
「──来たのか、あいつ」
きっと昼間にでも。
スーツの間に、ちらりと何かオレンジ色の…紙のようなものが見えた。
不思議に思って、それを取り出す。
夕焼け空の──封筒だった。
宛先の欄には
『To Alain with love』。
「─アランへ、愛をこめて…」
ぽつりと和訳を呟いて、封を切ってみた。
2枚に分けられた、これもまたオレンジ色の便せんが、手紙として入っていた。
「お前は何も悪くないのに…謝ってばっかりだな、瑞希」
苦笑した目尻に、水滴が溜まった。
傷つけてばっかりだ。
人間 を。
しかし…俺には意味が解らない。
そう思いながら、手紙を封筒の中に入れて、また部屋の中に戻った。
──瑞希
忘れる、って何だ?
引出しにしまった、
愛する手紙。
今日の月は、仄かに光を漂わせて──瑞希を想う俺の瞳を赤くさせた。
伝えきれなかった
好き、という気持ち
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