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「どうしたの?瑞希。」
にやりと笑いながら理子は問う。
あたしはうつむいていた顔を上げて、またまっすぐ理子を見た。
「…理子、あたし…」
「…………………。」
あたしが言いかけたまま黙っていても何も言わない理子を、じっと見つめる。
二人の間に、生暖かい風が吹き抜けて髪を揺らした。
「…あたしは、完全か不完全かなんて関係ないんだ。理子が完全だから餌になってあげるとかの問題じゃないの。――あたしは、ただ、アランの側でアランのものでいたいだけ」
アランだけのものでいたい、という願いはイケナイモノですか?
人間でなくたって構わないから――少しでもアランの側にいたい。
友達とか、恋人とか、関係に名前がないと不安になるみたいに、餌と御主人様を取り除いたら…あたしは空っぽだよ…。
「――アランが好きだから」
あたしの想いを込めた言葉は、淡く空に消えていく。
理子の赤い目に、色とりどりのネオンが映し出されている。
ふっと目を細めた彼女は、次に不適な笑みを浮かべた。
「つまり瑞希は…理子に血をあげる気がないってこと?」
細められた目からの視線の冷たさに、背筋に冷たいものを感じながらあたしは静かに頷いた。
「あはっ。は、は…あははは!」
理子が急に上げた笑い声に、あたしは息を飲んだ。
「は、あはは………お前が私のモノにならないならば」
もはやツッコミ所が多すぎて、言葉も出ない。
…口調、変わりすぎ。
「――死なせてでも食ってやる」
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