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  高村さんは、理子よりずっとずっと綺麗な人と一緒に歩いていた。 もしかしたらお客さんかも知れなかったけど。 ふらり、と自然に足が高村さんの足取りを追う。 少し距離を置いて、理子は静かに高村さんの後を尾行た。 そのうち、女の人は高村さんに手を振りながらタクシーに乗り込んで去っていった。 高村さんは笑顔で見送って、タクシーが見えなくなったら、理子が見ているとも気付かずに、煙草に火を付けた。 ――煙草、前と変わってないね。 「た…かむらさん」 煙を吐き出す唇が愛おしくて、理子は思わず彼の名前を呼んだ。 ゆっくりと振り向いて理子の姿を確認した高村さんは、目を見開いた。 「高村さん!」 駆け出そうとする高村さんの腕にしがみつく。 懐かしい高村さんの匂いが、鼻先にふわりと漂った。 「ねぇ高村さん。ずっと待ってるんだよ。――こっち向いてよ…!」 目を合わせようとせずに、ただ逃げる方向だけを見つめる高村さんに、理子は叫んだ。 通行人がじろじろと理子たちを見て行く。 辺りを見回してから、理子は路地裏へ高村さんを引っ張りこんだ。 「ねえ。理子のこと嫌いになったの…?だって理子と一緒に生きていきたいって、高村さん言ってくれたじゃん!」 言いながら、首筋に手をあてがうと、高村さんが理子の手を叩いて払った。 手が、熱くて、ひりひりする。 理子は言葉を失ったように、ただ赤くなった手を、胸の辺りに寄せた。 「触るな…ッ近寄るんじゃね…ッ!このバケモノ!」 ――頭の中で、何かが切れた。
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