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「あ-あ。邪魔が入っちゃった。」
唇に指を当てて、明らかに面白くなさそうな顔をした理子は、アランをじろりと睨んだ。
アランは目を伏せて、あたしを静かに降ろした後、ふわりとあたしに口付けた。
「瑞希、下がっていろ」
「下が…ってって…」
慌ててアランの服を掴むと、彼は軽く微笑んだだけで、何も言わなかった。
「瑞希に下がってて、なんて良く言うよ。」
鼻で笑う理子の声に、アランがあたしに背を向けて、視線の対象を変えた。
馬鹿にしたように笑いながら、理子は続ける。
「不完全のアランに何が出来るの?弱っちいくせに。」
「――お前は、何故血筋に執着する。」
「…ふ-ん。瑞希の考え方に感化されてきたわけか。じゃあ聞くけど、アランだって瑞希に理子の方が不完全だって嘘ついたでしょ?な-んでかな-?」
「……自分の口から言うのは…少なくとも俺にとって、酷だったからだ」
「へ-」
自分で聞いたくせに、思いきり興味のなさそうな様子で理子は相槌を打った。
あ、アラン舌打ちした。
「…理子が血筋にこだわるのはね、瑞希が傷つくのが怖いからだよ。――解ってないなんて言わせない。不完全と永遠を刻むなんて言ったら、瑞希はもう人間として生きてかれないんだよ?完全であったなら、ほとんど今までと一緒なのに。」
アランを通り越した理子の視線があたしを捕えているのを感じることが出来る。
アランは一度ため息をついて、理子の注意を自分の方へ向けた。
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