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  「不完全になって、瑞希が傷つくのは目に見えてるよ。理子は瑞希にそんな糸はいらないと思う。」 言った後に上唇を舐めた理子を見つめて、あたしは胸の奥辺りが、つきんと痛んだ。 少し俯いたら、アランがあたしの頭を撫でてくれた。 「傷つくのが目に見えてる…?実際に瑞希の心に傷をつけているのは誰だ?」 「…ちょ…アラン」 そっと呼び掛けても、彼は軽くこちらを見やっただけだった。 「リコ…瑞希がお前に裏切られて、殺されそうになって…どうやって傷つかないでいられる。──俺は、瑞希を傷つけるだけの存在なら、この世からの抹消を望む。」 すっ、とアランが手の平を理子に向けた。 あたしは慌ててアランの袖を引っ張ったけれど、動じる様子はない。 理子は怯む様子さえ見せなかった。 「…守るためには犠牲がいるんだよね。ね、不完全アランくん」 にっこりと微笑んで、理子は両手を広げる。 まるで、どうぞと身体を差し出すように。 その様子にアランは訝しげに眉を顰めた。 「やだな。やっぱり勇気ないんだ。弱虫。理子ちゃんの好意を無駄にする気なの?」 「──侮るな。生きる力が弱いと言えど、必ずしも…殺すに充分な力が完全より劣っているとは限らない。」 「……いっそ、一思いにね」 今までにないような綺麗な笑顔に、あたしは口を挟むことが出来なくなってしまった。 「望むのなら」 アランの一言から瞬きもしない間に、大きな破裂音がして、あたしは思わず目を閉じた。
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