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ふわっとあたしの額に唇を寄せて、アランはそっとあたしを抱き抱えた。
甘い甘い匂いが漂って、瞼を開ける力がなくなってくる。
あたしは深く目を閉じた。
アランの匂い。
一種のヤクのような。
──ヤクなのかも知れないよね。
「瑞希を傷つけるだけの存在なら…全て抹消しても構わない。己の命でさえも」
ふわりと漂うモヤ。
あなたは誰だっけ。
確か、凄く凄く好きだった気がするんだ。
ゆらりと形が変わって、モヤは段々色付いて来た。
銀色。
白。
青。
愛してる。
愛してる。
愛してる。
アランに聞いたことあったよね。
「人を殺したことある?」
って。
そしたらあなたは少しの沈黙の後に静かにひとつ頷いた。
あたしは何だかショックで、何も言えなくなってしまって…。
だけど、アランはそっと微笑んで、あたしに心配かけさせないように言ってくれた。
「人を殺すのは好きじゃない」
だけど、
ためらわないじゃない。
いとも容易く、あなたは理子を殺してしまったじゃない。
だけど嫌いになれないのは──あまりにも好きだからだよね。
アラン
触らないでなんて
近寄らないでなんて
そんな無理なこと
ほんとは
あたしが出来ないよ
──もっと傍にいたい。
けれど、あたしの決意は揺らいでしまった。
クリーニング出して、取りに行ったら…あなたと同じになりたかったのに。
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