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あたしはペンを手に取った。
少し前に買った、夕焼け空の便せんを目の前にして。
夕方。
アランが起きる時間だね。
あれから、アランには一度も逢っていないけど、何か繋がるものを見る度に…いつだって色んなものが巡る。
だけど理子を思い出すと…辛いものになる。
忘れなきゃ。
きっとあたしの害になるから。
普通の人間として、生きていこう。
何もかも忘れて、何もかも見えなくなって…そうすればまた笑顔でやり直せるよね?
理子のこともアランのことも、忘れられれば───。
だけど あたしは
忘れる前に
話したいよ
誰かに
あたしがアランを愛したことを
理子が生きていたことを
覚えておいて欲しいから
アランへ 、 と 黒い文字を走らせる。
何から書いたらいいのか分からなくて、そこまでで手を止めた。
──この手紙を書き終わった数日後には…アランはあたしの中でもう生きていない。
理子は最初から居なくなる。
ごめんね。
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