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沙代は、部屋中に響き渡るかのような大声で、
怒鳴り散らし、手にあったクッションを彼に投げつけた。
「だからメアドも消したし、和田にも言うたから。…もう許してって」
クッションを投げつけられても、健太郎は必死に謝り続ける。
沙代は眉間にしわを寄せたまま、深いため息をついた。
「…むかつく」
沙代は彼に背を向けて、充血した瞳を濡らしていく。
…毎回、喧嘩の原因は女やし。
「ごめんって」
健太郎は、小さく震える肩を眺め、もう一度…
彼女を強く抱きしめる。
「なんで、あんたなんか…すきになったんやろ」
「…ごめん」
体温を感じることで、
怒りを粒は大きなものへと変化していく。
嫉妬深いあたしも…悪いんかもしれへん。
でも、ほかの女と話してほしくない。
あたしだけを見ていてほしい。
そう思ってしまうんやから、しゃあないやん。
彼女のあたしがいても、そんなこと関係なく、
健太郎を好きでいる女は多い。
それが、健太郎に対しての…唯一の不満。
沙代は、ぎゅってだきしめてくる彼を、静かに見上げた。
「俺がすきなんは、お前だけやから…」
健太郎はかすれた声で、優しくささやいてくる。
沙代は唇を軽く噛み、彼のそばへ近寄った。
情けないけど、健太郎にわ勝たれへん。
やっぱり、この匂い…落ちつく。
彼の服に涙を吸い取られ、沙代の瞳は…次第に乾き始めていく。
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