ラスト

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ラスト

  最後に見たそれはすごく大きかった。   僕はお父さんが自慢だ。 お父さんはとても凄い。   僕が分からない漢字をいとも簡単に答えてしまう。 悩んでる時なんて見た事がないんだ。   お仕事は毎日針を縫ってるって聞いた事がある。 それで人が助かるみたい。 人を助けるのって凄い事なんだって。   あだ名は教授。 僕が見てるアニメによく登場する名前なんだ。 面白くて人気者。   でもアニメみたいな背が小さくて、ボサボサの髪をしたおじさんじゃない。   背は高くて格好いい。 しょっちゅうおデコをぶつけてるけどね。 ドジなんだ。   腕にはボールが何個も入っているんだ。 昔、レスリング?というのをやっていたらしい。 本当に硬い。僕とは大違いだ。   僕のお母さんは、そんな自慢のお父さんといつも一緒。 お仕事の時も一緒なんだって。     僕はお父さんが大好き。   でも僕は邪魔なのかな。   お父さんとお母さん、二人だけで旅行に行くみたい。 違う国の僕より小さな子どもを助けるって言ってた。 そこでは喧嘩が無くならないらしいんだ。   僕より大切な事なの?     僕はお婆ちゃんと一緒になる。   けど、大丈夫。 お父さんはいつも僕をギュッとしてくれる。   今だってそう。 お父さんの腕の中は暖かい。     僕は大丈夫。 泣いたりなんかしないよ。 ちゃんと我慢する。   だから一生懸命に手を振るんだ。 僕は男の子だから。 僕は強い子だから。 僕はお父さんの子だから。   精一杯の笑顔を作って言ったんだ。 「いってらっしゃい」       段々と小さくなっていく両親の後ろ姿。 ちゃんと最後まで見送れたよ。   だから褒めに戻ってきてよ。 お父さん……。
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