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世の悪魔
――君たちにとっての悪魔とは何だい?
僕が花屋の横を通り掛かると、向かいの空き地から声を掛けられた。
「おい!そこのエンジェル。ちょっと能力貸せよ」
見ると二人の少年が膝をつき、向かい合っている。片方は肩から血を流しているようだ。側には木の棒が落ちている。
どうやらチャンバラごっこをしていたようだ。
「今日は既に二人助けてるんだ。もう能力の限界だよ」
エンジェル。
自らの体力を消費し、対象を治癒する能力と、目視した骸の魂を物体の束縛から開放し、天へと昇らせる能力を有する種族の総称だ。
前者の能力があるために医者は少ない。なにかあった場合には、身近なエンジェルが治療しなければ患者の生命はもちろん、誹謗や中傷のまとにさえなってしまう。
君たちは後者の能力を覚えてくれてはいないだろう。
「あ?そんなの知るかよ。早く来い」
この世界は不思議だ。死に満ちている。
先程目視した花たち。僕には屍を並べているようにしか見えない。
僕が今立っている道路もそうだ。どれだけの魂が浮いてると思う?
「分かった。今行くよ」
ほら、今も君の足元で一匹の昆虫の魂が宙に浮いた。
助けられなかった。
――僕には、君たちが悪魔に見える。
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