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納豆
ある一組の夫婦が、テーブルに置かれた一パックの納豆を巡り、今世紀最大の討論を繰り広げていた。
「なぜ醤油をかけようとするんだ。納豆には賃金をいただいて働いている人達が研究した、タレというものが付いているではないか」
夫である男は、完璧にしないと気が済まない性格。炊事、洗濯は勿論、室内の掃除も完璧だ。そしてなにより、納豆はタレ派。
「うるっさいわね!ここを見なさいよ。納豆専用の醤油って書いてあるでしょ」
対する妻は大雑把。家事は夫に任せっきりだが、情に熱い性格を持ち合わせており、夫の我が儘を受け止める器量の持ち主でもある。食は追及派。
夫は両の手の平で机を叩き、力強く言った。
「これは、夫婦生活の食に対する死活問題だ」
妻も応戦するが如く、机を叩く。
「ええ、そうね。今後のためにもしっかり白黒つけましょ」
「そう、これは……」
「聖戦だ!」
「聖戦よ!」
こうして、ある一組の夫婦の、仁義なき納豆抗争の戦いの火蓋が切って落とされたのであった。
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