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どこからともなく
漂ってきた
ふんわりと
鼻孔をくすぐる梅の花の匂いを、
思いっきり深呼吸して吸いこむ。
自分の小さな胸が、
甘酸っぱい香りと、
全身を震わせるような高揚感で
いっぱいになるのがわかった。
(何日ぶりだろう…)
こんなに太陽の光を
体いっぱいに浴びたのは。
勇気を振り絞ってできた
つかの間の“自由”
この自由を失いたくない
あの場所に戻りたくない
もう二度と、
こんな機会はないだろう…
覚悟はあの日からできていた。
「待っててね…今行くから…」
あたしはかすれた声で
そう呟くと
ゆっくりと立ち上がり、
水面に映る蒼天へ向かって
飛び込んだ。
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