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文久3年 3月
厳しい寒さの冬が過ぎ
積もり積もった雪が溶けて、
やっと京にも春がきた。
先日の春一番で
艶やかに咲き、
人々を魅了していた梅の華は
散ってしまったけれど、
変わりにと言わんばかりに
柔らかに降りそそぐ春の日差しが
水滴に濡れた新芽を
眩しく輝かせる…
そんな初春の昼下がり
久しぶりに非番になった俺は、
賑やかな京のまちを
ゆったりと歩いていた。
溢れる人々の笑顔に目を向けながら
足は外れにある河原を目指す。
隊服を着ていないので、
背中に受ける視線が
普段よりも少なく感じるのは
間違いではないだろう。
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