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思えば彼は常に私の側にいた。
彼の友達と彼と私。
凄く楽しかった。
相変わらず私は彼を小馬鹿にし続けたけど、それでも私達の輪に笑いは絶えなかった。
私はなんて愚かだったのか。
こんなに近くで、ずっと支えてくれていた彼を。
蔑み、罵倒し、嫌みな笑いを飛ばした。
すべて作ったもの。周りに同調する為の演技。
でも、そんなのが分かるのは、私だけ。
気付けば走り出して彼を追っていた。
私の天秤は壊れていたのだ。
適度な距離をとって常に作り笑いをしていた。
薄い友情で結ばれた友達。
素の自分が出せた。腹の底から笑えた。
私を理解してくれていた彼。
失って初めて気付いたんだ。
涙で視界が霞む中、私は彼の姿を探した。
都合良すぎるのは分かってる。
怒鳴ってくれて構わない。
殴られたって構わない。
それでも
私から離れないで。
居なくならないで。
息も絶え絶え、私は立ち止まり、荒い呼吸を繰り返す。
気付かなかった。周りの悲鳴が。
気付かなかった。私の上に降ってきた、大きな大きな鉄の塊に。
気付かなかった。
彼が私のすぐ横まで走ってきていた事に。
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