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真っ白な世界の中で、赤い存在は掌程度の大きさしかない少女だけ。
赤い服を着て、赤くて長い髪を持っていて、瞳も赤い。
そんな、小さな小さな少女一人だけ。
降ってくる雪を見上げてばかりだった日に、来客が来た。
はじめて雪から目を離し、足音がした方を見た。
「…誰?」
「こんにちは」
来客は、赤い少女の問いに答えることなく、一方的に挨拶をしてきた。
赤い少女が見上げる来客は、黒い服を纏い、猫の耳を持つ男性。
黒猫が人間に化けたような人。
黒猫は、薄く目を細めてキセルを口から離し、煙を吐いた。
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