闇の残滓

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こんな学園は嫌いだったが、エマがどうしてもと言うから仕方なく入った。別にクラスメイトは良いのだ。寮母のコルベールだって優しくて好きだし、教師も気に入らない者が数名いるが、それ以外は好きだ。ファリミトルなど良い例である。ガシャナクを目茶苦茶にしたのはマーフィルなのに、それを責める事なく接してくれる。 ただ、学園長は大嫌いだった。エマに対して異常に厳しい。それだけの理由。 (あんなジジイ、大っ嫌い!早くくたばればいいのに) およそ子供には似つかわしくない思考だ。 それが面に出ていたらしい。 「な、なによぉ、怖い顔して……」 目の前でペルムが怯えていた。 「あ、ご、ごめんなさい」 我に返ってマーフィルは慌てて弁解する。 それにしても、さっきなにかを言っていた気がする。問い質してみた。 「だーかーらー、依頼はあったし、エマは職員室に行ったの!マーフィルも呼ばれてたから、依頼の内容をエマに聞いといたほうが良いよって言ったの!」 「ペルム、苛つかない」 ペルムは同じ事を二度言うのは嫌いらしい。ゼルカはそれが分かっているらしく、冷静に窘めた。 やがて教室の戸が開き、エマが戻ってきた。マーフィルを見るなり、こちらに向かってくる。 「目は覚めた?」 「うん。それで依頼は?」 エマは簡単に説明した。 「夜、見回りをしろってさ。怪しい奴を見かけたら取り押さえるぞ」 夜、と聞いて、少し不安になった。いつも出かける時間だからだ。 (大丈夫かな……。落ち着いてくれればいいけど) 胸をきゅっと押さえる。 非常事態になったらエマの前から消えればいい。ただそれだけのはずだ。 しかし、マーフィルから不安が失せる事はなかった。
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