18人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはよう」
ガラガラ、と教室の戸を開ける。途端、全員がこちらを見てきた。
「おはよう、エマ!」
「おはよ、エマくん」
その教室にいる生徒の中で唯一話しかけてきたのは、ペルム・ファクトリーとゼルカ・ファクトリー。双子で容姿は見分けがつかない。茶髪でくせっ毛なところも同じだ。ただし、雰囲気は違うので、ある程度付き合えば見分けられるようになる。ちなみに落ち着いた雰囲気の方がゼルカで、少し抜けてる方がペルムだ。
「…………」
エマが挨拶を交わそうと思っていると、マーフィルが立ちながら眠っていた。なんと器用な、とペルムが驚いていた。
「マーフィル、眠そうだね」
とペルム。
「ちゃんと寝てるのかしら」
とゼルカ。
「むにゃあ~……」
マーフィルはエマに揺り動かされ、そんな声をあげた。
ふとエマは気づく。
「おい、あの噂ってマジなのか?」
「ああ。見た奴がいるんだってよ」
「あのエマくんが……化け物……」
ひそひそと。
生徒達は、まるでエマを同じ人間として見ていないようだ。
噂の力って恐ろしいなぁ。エマは苦笑いしながらそう思った。
「……あんなのいちいち相手にしてちゃ駄目だよ」
声を低くして、ペルムが言った。それにゼルカも頷く。
「エマくんはなにも悪くないんだから。あいつらが最低なだけ」
未だひそひそ話を続ける生徒達。あまり気持ちの良いものではない。傍らのマーフィルも、明らかに不機嫌だ。
よし。
エマは、動いた。
最初のコメントを投稿しよう!