闇の残滓

3/13
前へ
/47ページ
次へ
「おはよう」 ガラガラ、と教室の戸を開ける。途端、全員がこちらを見てきた。 「おはよう、エマ!」 「おはよ、エマくん」 その教室にいる生徒の中で唯一話しかけてきたのは、ペルム・ファクトリーとゼルカ・ファクトリー。双子で容姿は見分けがつかない。茶髪でくせっ毛なところも同じだ。ただし、雰囲気は違うので、ある程度付き合えば見分けられるようになる。ちなみに落ち着いた雰囲気の方がゼルカで、少し抜けてる方がペルムだ。 「…………」 エマが挨拶を交わそうと思っていると、マーフィルが立ちながら眠っていた。なんと器用な、とペルムが驚いていた。 「マーフィル、眠そうだね」 とペルム。 「ちゃんと寝てるのかしら」 とゼルカ。 「むにゃあ~……」 マーフィルはエマに揺り動かされ、そんな声をあげた。 ふとエマは気づく。 「おい、あの噂ってマジなのか?」 「ああ。見た奴がいるんだってよ」 「あのエマくんが……化け物……」 ひそひそと。 生徒達は、まるでエマを同じ人間として見ていないようだ。 噂の力って恐ろしいなぁ。エマは苦笑いしながらそう思った。 「……あんなのいちいち相手にしてちゃ駄目だよ」 声を低くして、ペルムが言った。それにゼルカも頷く。 「エマくんはなにも悪くないんだから。あいつらが最低なだけ」 未だひそひそ話を続ける生徒達。あまり気持ちの良いものではない。傍らのマーフィルも、明らかに不機嫌だ。 よし。 エマは、動いた。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加