18人が本棚に入れています
本棚に追加
「あのさあ!」
檀上に上がり、生徒全員を見渡す。彼らは一様にエマに注目した。
「今、噂になってる、僕が化け物ってやつだけど、今からちょっとやってみせるから、見ててね!」
ざわざわと、生徒達は騒ぎ出す。
「おいおい、マジか?」
「エマの奴、なに考えてんだ?」
「なにをやらかしてんの、エマ!」
「そんな事やってなんになるのよ!」
「……頑張」
その中にはペルム、ゼルカ、半分寝ているマーフィルもいたわけだが。
すっ、とエマは片手を挙げる。そこに魔力を集中させた。
「それじゃあ、噂の正体、その目で確かめるんだね」
光がエマを包む。
教室内は目も開けられない程に眩しい。全員、目を覆った。
やがて光が収まる。
そして、檀上には、
化け物がいた。
肩を越す程の漆黒の髪、背中には漆黒の翼、漆黒の両手両足は、爪が異常に伸びている。
極め付けは、殺気に満ちた顔。
口は裂けている。そこから牙が覗いていた。
「う……」
誰かが呻き声をあげた。
「あ……ああ……」
誰かが逃げようとしているが、腰が抜けて立てないらしい。
にい、と化け物は笑う。まるでこれからここにいる生徒全員を殺そうとしているかのように。
「ああああああああああああああああ!!」
そんな時だった。
一人の生徒が雄叫びをあげたのは。
それは決して化け物に立ち向かおうとしたわけではない。彼は知っていたのだ。
「エマくん……君は……」
全員の注目を浴びながら、彼は感動に打ち震えているようだった。「仲間がいた、仲間がいた」と呟いている。
「君も系統魔術、『変化』が使えるんだねっ!!」
『……は?』
その場に居た全員が声を合わせてそう言った。
「あはははは!やっぱり分かる奴が居たか!」
笑うのは化け物――エマ。余りにも予想通りだったから、笑いが止まらない。
「え?え?なんなの?」
「ふむ。成る程ね」
「……さすがお兄ちゃぁ~……」
ペルムは分かっていなかったが、ゼルカと本当に眠そうなマーフィルは、エマの意図を理解した。
エマが使った系統魔術は『変化』というものだ。そのイメージがあれば、なんにだってなれる。異性にだって、物にだって、化け物にだって。
エマはこれを使って噂を破壊にいった。こうすれば、あの時も『変化』を使っていた事になる。そうなれば、エマが化け物だ、なんて噂は消え去るだろう。
最初のコメントを投稿しよう!