闇の残滓

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別にいいか、とエマは反論をやめた。わざわざ言う事でもあるまい。 スルナは比較的出来る男だ。成績も中の上といったところ。ちなみに顔は良く、結構モテる。貰ったラブレターは数知れず。 そんなスルナは、いつも大人しい。普段はこんなに元気なわけではない。そんなに『変化』仲間を見つけて嬉しかったのだろうか。 と、そこで放送が入る。 『エマ・ナックくん、マーフィルさん、至急職員室まで来てください』 来たか、とエマは腰を上げる。だが、今あの子は寝ている。机に突っ伏しながら、気持ち良さそうに。 (最近多いよなー) 教室の戸に向かう。後ろでスルナが「エマくん、変化を使うんだ」と必要性のない事を言っていた。 「エマくん」 「頑張ってね」 ゼルカとペルムが続けて言った。 職員室の前に立ち、エマは深呼吸。気持ちを入れ替える。 「よし」 一気に戸を開け放つ。そこにはシルフィーの教員が数名と、学園長のアンフィニ・ジュールがいた。今日もその白髪と白髭はふさふさだ。 「今日も『依頼』がある。マーフィルくんと行ってくるんだ」 アンフィニはいかにも老人らしい声で言った。 「分かりました」 アンフィニに背を向ける。その目は最早、先程までのエマではない。気持ちは完全に切り替わっていた。 エマは魔術学園シルフィーにくる『依頼』をこなす、選ばれた生徒なのだ。彼はこの為だけに通学していると言っても過言ではない。この依頼は危険なものから心和むものまでたくさんあり、毎日シルフィーに寄せられる。それは通常、教師がこなすものなのだが、彼らも無限に動けるわけではない。そんな、どうしても手が回らない時、エマ達選ばれた生徒が動く。 今回の依頼は、夜、城下町になにかが現れるので、それを退治して欲しい、というものだ。被害状況は、それが発見された場所周辺が、目茶苦茶にされるらしい。
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