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「マーフィルくんはどうしたね?」
職員室を出る直前、アンフィニに言われたが、曖昧に答えるだけで、ちゃんとした事は言えなかった。エマ自身、よく分かっていなかったのだ。
マーフィルはエマの妹だが、そこには並々ならぬ事情がある。先日起こったガシャナク襲撃事件も、敵勢力の首領はマーフィルだった。だが、エマはすべてを知った上で彼女を傍に置いた。マーフィルはなにも悪くない、と。
そんなマーフィルが最近、深夜によく出かける。問い詰めてもはっきりとは答えない。ただ「出かけたいから」とだけ。それ以上訊くのは躊躇われた。
朝方頃になるとフラフラ~、と寮に戻ってくる。寮母であるコルベールにも気づかれずに。一種の才能だと思った。
なにをしているのか気にはなったが、尾行するのもなんだか嫌だった。マーフィルに対してこそこそするのが嫌だったのだ。だから放任している。
しかし、この頃は居眠りが目立つ。朝方頃に帰ってそのまま死んだように眠るのだから、当然居眠りぐらいする。マーフィルは短時間の睡眠で満足するような年齢ではないのだ。
(今度注意するか)
一度嘆息して、職員室から教室に向かった。
「おふぁよぉ~」
目を擦りながらマーフィルが言った。クラスメイトは苦笑いだ。
「エマくん行っちゃったよ?ちゃんと夜に寝てるの?」
注意するようにペルムが言った。
「え?今日、依頼あったの?」
放送があっても、その時マーフィルは寝ていた。今日は依頼なさそうだってお兄ちゃん言ってたのにな、と少し苛立つ。
マーフィルはこの学園のシステムが気に入らなかった。教師が依頼をこなすなら、生徒にやらせなくてもいいはずだ。いくら手が回らないとはいえ、それでは選ばれた生徒が余りにも不憫だと思う。
マーフィルは知っていた。最愛の兄が疲れながらも依頼をこなしているのを。教師になりたくて必死に努力しているのを。
なのに、同年代の者がなれて、エマがなれないというのはおかしいではないか。エマはその者に劣らない。勉強だって出来るし、教え方も上手だ。なのに教師になれない。
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