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沈黙を守る緋月にあきらめたのか、女将はそれだけ言うと、ため息混じりに部屋を出て行った。
「・・・でもね、どうせここから逃れることはできないんだ。上に上がればあがるほど、借金は重なっていく。ここで暮らす限り、減ることはない・・・。どうせ増える借金ならば、返す必要もない。」
女将が出て行った後、緋月がそっと息をついた。
それに、緋月には、ほかの遊女たちと違い、帰る場所を持たない。身請けされ、見知らぬ世界で生きていくよりも、生まれ育ったこの吉原で骨となることのほうが、どれだけ幸せなことか・・・。
遊女は、ここにいてこそ華。外に出てしまえば、色も香りも失う・・・。華のない遊女など、見る影もない。
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