-序章- 月が昇る

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そしていつもどおり、銃の音が響くはずだった。 一発で、殺すつもりだった。 「っ……」 それなのに、私の銃を持つ手は震えていた。 どうしてだろうか。 いままで、こんなことなかったのに。 冷や汗が流れる。 そしていつの間にか、疑問は恐怖に変わっていった。 怖い。殺したくなんてない……。 理由は分からないが、銃の引き金がどうしても引けない。 「……撃つのか?」 ナツメがそう訊いてきたが、私は動かなかった。 いや、動けなかった。
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