-序章- 月が昇る

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ナツメの声はどこか哀しそうで、私は罪悪感が全身に広がった。 「何で……何で、殺そうとするんだよ」 今から殺されると言うのに、ナツメの目はまっすぐに私を捕らえていた。 そんな風に見ないでよ。私は、あなたを殺さなければならないの……。 しかしナツメは動かない。 とうとう恐怖に負けた私は、銃をゆっくりと下ろした。 敵の目の前では、絶対にしてはいけないことなのに。 「……命令だから」 やっと言えた一言が、たったそれだけだった。もっと言えることがあるはずなのに。 その上、ナツメは銃を持った私に近づいてくる。 怖かった。 どうしていつ撃たれるかか分からないのに、怖がらないのか……私と平然と話していられるのか。 コツ…コツ……コツン ナツメは、私の目の前で止まった。 「――撃つのか?」 私をまっすぐ見ながら、両手を広げている。 殺せばいいのに、殺せなくて。 私はただただ、ナツメをずっと見つめているしかなかった。どうして……なのだろうか。
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