-序章- 月が昇る

14/15
前へ
/150ページ
次へ
私は震えながら、ナツメに訊いた。 「どうして、こんなに近づくの? どうして……撃てって言うの?」 ナツメは黙ったまま、ただ私を見据える。 ああ、殺さなければならない相手と、こんな風に色々話すのは初めてだ。 感情なんて捨てなければならないのに。殺さなければ、殺されるというのに。 私がじっとナツメを見つめると、ナツメはただ一言だけこういった。 「だって……みつるがそんなことするやつじゃない、そう思ってるからだよ」 まっすぐに、その言葉は響いた。そしてその瞬間、私の中では二つの感情が葛藤した。 命令……殺さなければ殺される………。 私は銃を構えた。 カチャ、と言う音が響く。 でも、殺したくない……。 でも、そう思っては躊躇してしまう。 「……よし」 私は散々悩んだ末に、一つの行動に移した。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加