‐Ⅰ‐ 逃亡

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みつるは銃を、手から離した。銃は静かに地面に落ちる。 「撃てない……どうしても、銃が震えてしまうの」 俺はもう一度、落ちた従を自分の頭に持っていき、今度は自分で引き金に指を置いた。 「俺のせいで人が死ぬんなら、俺が死んだほうがましだ」 今まで、どれほど宝石を盗んだことか。 あのまま死んだほうが、罪を償えたのに。 しかし、みつるは声を振り絞るようにして言う。 「違う! 私は生きたい……」 選択肢なんてなかった。 “生きたい” その言葉は、響いて……もう一つの選択肢があることを、教えてくれた。 「そうだ、一緒に、逃げよう。遠くまでずっと……そして、一緒に生きよう」 俺たちは決めた。 そう、この運命から逃げるんだ。
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