‐Ⅰ‐ 逃亡

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月は雲に隠れ、時々顔を出す。 俺はそれを眺めながら、みつるの言う昔話を訊くこととした。 「ある日、愛し合っていた二人がいたの。その二人は……指名手配犯で。 いつつかまって死刑か分からない……だから、その二人は空の上に、自分たちだけの国を作ったの」 俺はその不思議な話に魅入られつつ、続きを尋ねた。 「それで?」 続きを促されたことが嬉しいのだろうか、みつるは声を少し大きくした。 「それが“天空の城”って言う幻のお城なの。天空の城は、今もまだ残っていて……それが、ほら」 みつるは西を指差した。 俺は思わず、みつるの指差した方向を見た。森が生い茂っている。 「あっちのほうに、あるんだって」 その輝く顔を見て、罵る気にはなれなかった……夢を語っているみつるはかわいくて、思わず見とれてしまうほど。 何を思っているのやら。
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