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月は雲に隠れ、時々顔を出す。
俺はそれを眺めながら、みつるの言う昔話を訊くこととした。
「ある日、愛し合っていた二人がいたの。その二人は……指名手配犯で。
いつつかまって死刑か分からない……だから、その二人は空の上に、自分たちだけの国を作ったの」
俺はその不思議な話に魅入られつつ、続きを尋ねた。
「それで?」
続きを促されたことが嬉しいのだろうか、みつるは声を少し大きくした。
「それが“天空の城”って言う幻のお城なの。天空の城は、今もまだ残っていて……それが、ほら」
みつるは西を指差した。
俺は思わず、みつるの指差した方向を見た。森が生い茂っている。
「あっちのほうに、あるんだって」
その輝く顔を見て、罵る気にはなれなかった……夢を語っているみつるはかわいくて、思わず見とれてしまうほど。
何を思っているのやら。
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