‐Ⅰ‐ 逃亡

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そいつの真っ黒なマントの隙間から、きらりと光るものがあった。 なんなのだろうか。 「だ、誰だよお前……」 しかしそいつは、挨拶代わりに光る何かを取り出した。 ――スパッ!! 凄い勢いで、一本のナイフが飛んだ。 そいつは深々とお辞儀をして、自己紹介を始めた。ナイフを投げてきたくせに。 「これは申し送れました。僕の名前はランチェル……と覚えてくれれば結構ですよ」 ランチェルはニコニコしている。到底、さっき瞬間的にナイフを投げたやつとは、同一人物だと思えない。 そのギャップの激しさに、頭の中はパニックに陥る。 ランチェル……まさか、みつるを殺しに来たのか? と、ランチェルはマントを翻して、近づいてきた。 俺はとっさに後ずさりをして、次の攻撃に構えた。 「まあ、素質はあるようですね……僕の弟子にでもなりませんか?」 いったい何を言い出すんだろうか。 訳の分からない状況に、俺はただ、頷いて聞くしかなかった。
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