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手渡されたバスケットの取っ手を引っ掴んだまま、シーツお化けは元来た道へ走り出します。
シーツお化けは一カ所だけ空いた穴から左目だけで、夜のリズナー通りを駆け抜けながら叫ぶのです。
「ママなんて大っ嫌い!」
ハロウィンの用意をしてくれない母へ、叫びます。
仕方なくボロボロのベットから、同じくボロボロのシーツを被って参加したのです。
シーツだって、本当はシーツなんかではなくて、ミセス・コーニッシュの生地屋で買ったただの白い布なのです。
「ミセス・コーニッシュなんて大っ嫌い!」
彼女の本当の名前はラファエナ・コルシェ。
コルシェ生地店の店主で、少々怒りっぽいお婆さん。
だけれども、それ以上に忘れっぽい彼女をみんな、子供の時に『ミセス・コーニッシュ(ニワトリ)』とあだ名するのです。
ほんとうは優しいお婆さん。
だけれども、シーツお化けはそんな優しさが嫌いでした。
「ハロウィンなんて大嫌い!」
一年で一番、自分が可哀想になる日。
シーツお化けは、一番可哀想なお化けなのです。
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