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シーツお化けは息を切らしながら、それでも走ります。
本当はもう、何も見えません。
シーツを被ったまま、ひたすらにリズナー通りを走ります。
「おやおや、シーツお化けや、忘れ物をしておるよ?」
優し気なおじいさんの声にシーツお化けは立ち止まります。
振り返ると、鉄格子の門戸が開かれて白髪のおじいさんが笑っているのです。
「森へ入ってはいけないよ、こっちへおいで」
おじいさんは拾い上げたあめ玉をかざして、微笑むのです。
「取って食いなどはしないさ」
シーツお化けは知っているのです。
このお屋敷はハロウィンの日にだけ灯りがつき、お菓子を強請りに来た子供を食べてしまうお化けがいることを。
「大丈夫さ、ケーキもチョコもクッキーもある。お腹が減っているならキッシュもどうだね」
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