きれいな石の恋人

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泣き濡れる私に声をかけたのはこの男。 「この男に林檎を与えて御覧なさい」と、私に林檎を売ったのはこの男。 言うとおりにしたら、 私の家の宝石が集まってきて、彼が生き返ったのよ。 私は彼の宝石の肌が美しくて見とれてしまいました。 やがて、嬉しかったけど、どこかで大変な罪を犯したという恐怖が沸き起こり、林檎売りに今日の記憶が薄れる3ヶ月後、私の罪を思い出させて欲しいと頼んだのでした。 「では、私はこれで。」 林檎売りはそう言うと、白い蛇と共に夕闇の中に消えていったのです。 呆然として、取り残された私に、彼が近づくことはありませんでした。 ただソファーに座って、ただ前を向いています。 私のきれいな石の恋人 彼にとって私は、 いたらいたで嬉しい。 でも、いなくても差し支えはない。 そんな存在だったのです。 私が彼を孤独にしてしまった。 淋しさも、愛も、なにも感じない、汚れることのない、きれいな孤独。 「ねぇ…」 「私の事、…好き?」 ーーーぱらっーーー
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