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次の日、俺が仕事から帰ると、玄関の前に白い影が見えた。
まさかと思って駆けていくと、それを見つけたアイツは、嬉しそうに「ワンッ」と吠えて尻尾を振っていた。
俺にそこまで懐いてくれたのだという嬉しさと、また捨てに行かなくてはいけない悲しさと、何故帰ってきたのだという苛立ちが混ざった、何だか複雑な思いを感じた。
仕事帰りの身にも関わらず、俺はコイツを河原まで捨てに行った。
それからだ。
何度も何度も捨てに行くのに、コイツは次の日には玄関先で尻尾を振って待っている。
こんなに帰ってくるならと、家内に頼んでも、コイツを捨ててきてほしいと言って聞かなかった。
保健所に連れて行く気にはなれず、別の場所に捨ててくるという手もあるはずなのに、俺はあのいつもの河原に捨てるのだ。
何故だろう。アイツの笑ったような顔を見る度、俺はもはやうんざりして、苛々しているのに。
どうしても、あの河原以外の場所を選べないのだ。
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