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その日も、やっぱり玄関先に、白い犬がいた。
ずいぶん汚れてしまった白い毛並みを風に揺らし、舌を出して俺を待っていた。
コイツは、何故か飛びついて舐めたりはしなかった。
もう、前の自分と姿が違う事がわかっているかのように、俺を見つけて駆け寄っても、足元でおとなしく俺を見上げているだけなのだ。
そんなコイツを、俺はまた自転車のカゴに乗せ、河原に連れて行く。
今日は何故だか、いつもより夕焼けが悲しく感じて、気づけばコイツとまだ自転車に乗っていたいと思っていた。
アイツは俺が去るときに、「くぅーん」と寂しそうに鳴いた。
初めての事に驚いて、後ろを振り返りそうになったが、俺は自転車に乗り、白い犬の視線を背中に受けて帰った。
その夜は、アイツの夢を見た。
初めて捨てた日以来見ていなかったのに。
ダンボールの中、冷たい外気にさらされて、それでもアイツは星空を見ていた。
寂寞の思いに締め付けられながらも、明日また会えると、俺を想って眠りにつく夢だった。
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