―壱―

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「やっと来ましたか………。」 「すっ、すいません。」 重厚感溢れる机。それにしっくりくる椅子。そこに鎮座している女性―――ミリア・ルメリアは静かに言った。 因みに、ミリアの机の前にはサザラとティナが立っている。 「………あの…何のご用ですか?」 サザラは恐る恐るミリアに尋ねた。ミリアはキッとサザラを見据えた。サザラは思わずビクつく。そんなサザラを無視してミリアは言葉を続ける。 「貴女達2人にはカザマルに行って、とある人を救出してもらいます。」 「とある人と言うのは…?」 「それは道中、彼に訊いてください。」 そう言うと机の上の呼び鈴をチリンっとひとつ鳴らした。すると、扉が開き眼鏡を掛けた若い修道士と1人の少年が部屋に入ってきた。見れば少年の顔は今にも泣き出しそうだった。     ☆-☆-☆ 「僕の名前はマルク。カザマルの学校に通ってるんだ。」 がたがたと揺れる馬車の中サザラとティナに相談主の少年― マルクはカザマルに向かう教会専用の馬車に乗っている。 「僕等のホントの担任の先生は御用事で遠くに行ってて、先生の代わりにフォウンお兄ちゃんが僕等に教えてくれてたんだ。」 「先生の代わり?」「ホントの担任の先生は旅に出てるんだって言ってた。」 「成る程。」 「でね、来週には先生が帰ってくるからフォウンお兄ちゃんは先生の代わりはもう大丈夫だから今週でお仕舞いだったんだ。なのに………なのに変な奴がフォウンお兄ちゃんに卑怯な手を使ってフォウンお兄ちゃんを捕まえちゃったんだっ!!」 そう言うとマルクは堰を切った様に泣き出した。 「他の先生は、どうしたんですか?」 「他の先生は、変な魔法で、教室に、閉じ込められちゃったんだ。」 ティナの質問にマルクは、ひっくひっくと泣きながら答える。 泣きじゃくるマルクを見て、サザラはマルクの頭を撫でた。 「大丈夫、ボクがそのフォウンお兄ちゃんも他の先生も皆、絶対助けるから。安心しな!」
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