―壱―

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―――此処は、リトニア帝国の町カザマルのとある学校の校庭。 そこに1人の男が立っており、その手には剣が握られている。男の前には数人の子供が武器を構えている。 その近くに1つの牢屋ともとれる大きめの檻があり、その周りには大勢の子供達が心配そうに見ている。その檻の中にはボロボロになっている青年が倒れている。 「フォウンお兄ちゃんを返せ!」 「大人なのに大人気ないぞ!!」 「五月蝿いですよ?少し黙ってください。」 そう言うと男は子供達に向かって剣を一閃する。 「うわぁあ!」 剣を一閃しただけで次々に子供達が吹き飛ばされる。 「たかがガキ数人で何とかなるとお思いですか?なんと浅はかな!!これだからガキは―」 「黙れ…外道が…!」 男は子供達に言い放った。すると、檻の中に居る青年―フォウン・ギルティングは体を起こしながら、息も絶え絶えに呟いた。 「おや、まだ息が有ったのですか……」 フォウンの呟きに気が付いた男はフォウンの囚われている檻に近付くと、手に持っている剣をフォウンの右手に深く突き刺した。 「ぐぁぁっ!!」 「私に負けた貴方が何を言っても負け犬の遠吠えにしか聴こえませんねぇ」 「て…めぇ…リヒテン……ミスマル…っぐぁぁぁっ!っっ…。」 リヒテン・ミスマルと呼ばれた男はフォウンの右手に刺した剣を捻り抜いた。既に満身創痍だったフォウンはその痛みで気を失った。 「フォウンお兄ちゃんっ!!!」 「お兄ちゃん!!」 フォウンの入れられた檻に子供達が心配そうに駆け寄る。それを見てリヒテンは、 「全く……煩わしいガキ共だ。そうですねぇ実験体にしましょうか。子供の実験体は少ないので大変喜ばしいですしね……ただ、少し数が多いですねぇ…減らすことにしましょう」 呟くと子供達に向かって剣を振り上げる。それに気付いた子供達は逃げようとするが、目の前に近付く死の恐怖に怯え体が思うように動かず逃げるに逃げられないようだ。リヒテンが剣を振り下ろそうとした瞬間―― 「「天空の怒雷よ、彼の者に裁きの雷を!!」」 雷がリヒテンの剣に落ちた。
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