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あれからあのトンネルには近づいていない。
琥珀が言ったもの。
~振り向いてはいけないよ~
って…
あの時離れたあの手がどんなに愛おしいか…あの後の琥珀の運命をどんなに思い願ったか…
ふと道の脇を流れる川が目についた。
この寒さからかちょろちょろとしか流れていない自然の川。
千尋は川の前で立ち止まり、その儚い川の流れを見つめた。
「珀…」
帰ってくるはずもない呼びかけ。何度そうした事か。
異世界に迷い込んだ自分を導いてくれたように、銭婆の家に迎えにきてくれたように、こうやって呼んだら何故だかまた会える気がしてしまう。
「珀…私…きっと町を出るわ。」
あなたに会える事を信じ、この先もずっと…
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