① 5年後 ~約束~

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早苗は千尋に構わず喋り続ける。 「あんたこの前学年1ハンサムな水野君に告白されてフったんだって!?そこまでしてそのいつ現れるかも分からない王子様を待ってるのぉ???」 「そんなんじゃないよ…」 早苗はおおきなため息をつく。 「まっあんたがしたいように生きたらいいよ。どのみち進学するにはこの町を離れなくちゃだしね。」 「…うん…」 千尋が住む町は、町とはいえ随分の田舎町だった。千尋が通う中学も町で唯一のものだし、ましてや高校なんて言ったら男子専門の工業高校が一つあるだけだ。 だからこの町の子どもは高校に進学するにはほとんど隣町の高校へ行く。しかし隣とはいえ一時間に一本の二両編成の電車を片道一時間かけて通わなければならないので、ほとんどの生徒が高校の寮に入ってしまうのだ。 千尋の両親も、寮へ入るのを進めているのだ。 別にこの町に残るからといって何が起きるわけでもないのは分かっている。だけど、それでも…という気持ちが千尋をこの町に縛り付けているのだ。
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