1456人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
早苗は目の前の千尋のポニーテールを見つめた。
「…そういえば千尋ってさぁ、一回も髪型変えてないよね。転校してきてから一度も。部活で何回も切れって言われてたけど、まじめなあんたがそれだけはしなかったもんね?」
早苗は更に続ける。
「その髪留めもさぁ、ずっと同じのだよねぇ。なんで何年も使ってるのにそんなに綺麗なの??どこで買ったの??」
千尋は鞄から顔をあげ、そっと髪留めを触った。
「これは、買ったんじゃなくて、もらったの。」
「まさか″約束のきみ″!?」
千尋は懐かしそうに微笑みながら首を横に振る。
「ううん…大好きなおばあちゃんから…」
この髪留めがあの世界を唯一現実のものだったと答えをくれる。
銭婆がくれた髪留めを、千尋はあの日から肌身離さず付けていた。
最初のコメントを投稿しよう!