2237人が本棚に入れています
本棚に追加
「準備を急いで! 時間がかかればかかるだけ人が死ぬわ!」
滝沢は叱咤した。
WT隊発進の命令から十分経過。未だ、WTの準備完了には至っていない。
横須賀に真っ直ぐ帰るつもりが、いきなり救助作業となればもたつくのも無理は無いが、この航空巡洋艦【星風】が、即時展開を目的とした強襲艦である事を考えると、艦長としては頭が痛いのだ。
「対空警戒も緩めるな」
荒木も目を光らす。
どこの国がこんな馬鹿げた事をしでかしたのかはわからないが、決戦兵器を使うからには、当たり前だが、決戦を挑むものだ。
舐めた真似をしてくれる。
世界第三位の空軍力、世界第二位の海軍力。
陸軍力も、もはや旧時代の頃の威光を取り戻しつつある。
そして【要塞列島】と謳われた神州日本。
【自衛隊】と呼ばれていた頃の名残だろう。
防御に撤した皇御軍(スメラミクサ)に死角等皆無。
来るなら来い。
と、荒木は息巻いた。
意味も無く全員に喝を入れようと息を吸い込んだ時だった。
突然鳴り響いたサイレンに邪魔され、荒木は文字通り息を詰まらせた。
「レーダーが未確認・未登録の船舶を多数捕捉!」
オペレーターの一人が大声を上げた。
「大画面に映して!」
「遂に来たか」と呟いた滝沢は、それに負けない大声を出す。
正面の大画面に拡大されて映し出されたレーダー。
一目見て、滝沢は自分の目を疑った。
「……なんて数なの………?」
マーカーの数はおよそ五十。
首都圏内にいる全帝国空海軍船舶の約二倍。
圧倒的戦力だった。
「どこの国だ……」
信じられないという面持ちで荒木がこぼす。
敵の位置を割り出したオペレーターが叫ぶ。
「上ッ! 上にいます! 敵艦隊は宇宙軍! すでに大気圏突入を完了しています!」
電撃奇襲降下作戦。
気後れするクルーを滝沢は一喝した。
「対空戦闘用意!! WT隊発進!」
初実戦の訪れは、あまりにも唐突であった。
最初のコメントを投稿しよう!