東京、赤きに沈む

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「準備を急いで! 時間がかかればかかるだけ人が死ぬわ!」 滝沢は叱咤した。 WT隊発進の命令から十分経過。未だ、WTの準備完了には至っていない。 横須賀に真っ直ぐ帰るつもりが、いきなり救助作業となればもたつくのも無理は無いが、この航空巡洋艦【星風】が、即時展開を目的とした強襲艦である事を考えると、艦長としては頭が痛いのだ。 「対空警戒も緩めるな」 荒木も目を光らす。 どこの国がこんな馬鹿げた事をしでかしたのかはわからないが、決戦兵器を使うからには、当たり前だが、決戦を挑むものだ。 舐めた真似をしてくれる。 世界第三位の空軍力、世界第二位の海軍力。 陸軍力も、もはや旧時代の頃の威光を取り戻しつつある。 そして【要塞列島】と謳われた神州日本。 【自衛隊】と呼ばれていた頃の名残だろう。 防御に撤した皇御軍(スメラミクサ)に死角等皆無。 来るなら来い。 と、荒木は息巻いた。 意味も無く全員に喝を入れようと息を吸い込んだ時だった。 突然鳴り響いたサイレンに邪魔され、荒木は文字通り息を詰まらせた。 「レーダーが未確認・未登録の船舶を多数捕捉!」 オペレーターの一人が大声を上げた。 「大画面に映して!」 「遂に来たか」と呟いた滝沢は、それに負けない大声を出す。 正面の大画面に拡大されて映し出されたレーダー。 一目見て、滝沢は自分の目を疑った。 「……なんて数なの………?」 マーカーの数はおよそ五十。 首都圏内にいる全帝国空海軍船舶の約二倍。 圧倒的戦力だった。 「どこの国だ……」 信じられないという面持ちで荒木がこぼす。 敵の位置を割り出したオペレーターが叫ぶ。 「上ッ! 上にいます! 敵艦隊は宇宙軍! すでに大気圏突入を完了しています!」 電撃奇襲降下作戦。 気後れするクルーを滝沢は一喝した。 「対空戦闘用意!! WT隊発進!」 初実戦の訪れは、あまりにも唐突であった。
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