東京、赤きに沈む

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「……は?」 幸人は自分の耳を疑った。 今、確かにこの少女は自分の名前を「ユキト」と呼んだ。 聞き間違い……ではない。 「大変ッ!!」 なぜここにいるのか、どうしてこうなったのか、この娘は誰だったか、なぜ名前を知られているのか、混乱した思考回路は突然の彼女の悲鳴に切断された。 目を見開いた彼女は口を押さえて震えている。 「あ、足っ。それっ、ウソッ!」 どうやら瓦礫に挟まれた幸人の足の事を言っているらしい。 「ああ、大丈夫。動けないけど痛くないから」 「だけどそれじゃあ……!」 「助けを待とうよ。大丈夫なんだから」 埋もれた幸人の下半身を凝視している彼女は、あちこちに擦り傷や切り傷があるものの大きな怪我はしていない。 なんだか自分が助けたような気になって誇らしかった。 「それにしても、外はどうなってるんだろ」 この帝都東京に何かとんでもない事が起きた。というのはわかる。 そして光。全てを根こそぎ無に変えた。 赤い光。 「……あの光はなんだったんだろうな」 ずっと押し黙っている少女に幸人は話題を振ってみた。 「………」 彼女は何も答えない。 「……えっと、そう言えばさ……」 「あの光は“秩序”だよ」 気まずい雰囲気をどうにかしようと、昨日の年末特番の話題に話を変えようとした時にいきなり話し始めた彼女に、頭を殴られたような気分になり、幸人は彼女の話に耳を傾けた。 「秩序?」 「うん。自分勝手な……ね」 サファイアの瞳にすっと影がさされ、少女は辛そうな顔をした。 「……ゴーマンだよ。あんなの」
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