滅び の 微笑

25/43
2237人が本棚に入れています
本棚に追加
/803ページ
ニューヨークの中心にあるホテルの一室で、クローディアはベッドに腰掛けていた。 ニノミヤはチョコレートを買いに街に出ていて、今は一人。 不思議、逃げ出そうとは思わなかった。 ただ、暇……といえばいいのだろうか。 やる事が無くて困っていた。 もう見慣れた窓の外を見る。 ここから見える四角の空間が好きだ。 夕暮れに“彼女”の微笑みが染まり、母に包まれるような優しい感覚に陥る。 母なんて知らないけれど。 「テレビ……」 パチンと音がして黒い画面が明るくなり、金髪の男性が何かを話している。 少しだけ生えたヒゲが博士に似ていた。 どうという訳でもなく、ぼーっとテレビを見ていた。 「チョコレートが食べたいです」 コンコン ドアが鳴った。 ニノミヤ? コンコン 鍵はかかっていないはずですよ。 コンコン わかりました。今開けます。 クローディアがドアを開けたのと、顔を真っ白な布が覆ったのは同時。 全てわからなくなったのも、同時だった。
/803ページ

最初のコメントを投稿しよう!