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――――と、
左横に目が行く。
目の左端を、紅い光が掠めた様な気がしたからだ。
ロバートは振り向いて、絶句した。
リバティ島の“彼女”が、自由の女神が、紅い光に包まれていた。
暴力的で無遠慮で、圧倒的で絶対的な破壊がそこにあった。
恐怖が、突如ニューヨークに顕現したような光。
紅い光の中で、“彼女”は無力だった。
石造りのアメリカ合衆国の歴史が轟音と共に崩れ去っていく。
「ステーツ(合衆国)が…………」
一人、そう呟いていた。
呆然と、ロバートはアイシャに目を戻した。
黒のシックなドレスに身を包んだアイシャの顔は、何が起きたのかさっぱりわからないという様子だった。
「アイシャ!」
叫べたのかどうかわからなかった。
ただ、熱い。
苦悶の表情を浮かべる妻にロバートは駆け寄って行く。
熱い!身体が。
水分を一瞬で失った腕が見る見る炭化していく。
それでも、ロバートは妻の元まで走っていく。
それはかなう事なく、一拍遅れて到着した灼熱の衝撃波はロバート、アイシャ、そして周りの人々の肉体を破壊し、爆風がその消し炭を空に舞い上げた。
この日、
無敵国家アメリカ合衆国の歴史が、文字通り崩れ去った。
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