東京、赤きに沈む

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報告を聞きながら、滝沢は身体がゾクゾクと音を上げて粟立っていくのを感じていた。 何が起きたか知らないが、国家の一大事であることは間違いない。 好奇心と行動力は自他共に認める帝国空軍一。 “野次馬めぐみ” とは、帝空中将大隅義一郎の言である。 じっと黙り込んでモゾモゾしている滝沢を見て、副艦長の荒木が釘を刺す。 「いけませんよ、艦長。本隊からの指示を待たねば」 何を? 言うまでもない。 「ゆう子ちゃーん」 「はぁい?」 「横須賀基地の司令に打電お願いね」 「はぁい」 「か、艦長!!」 顔を上げた滝沢の顔はまるで子供の様に光り輝いていた。 「航空巡洋艦【星風】は東京都港区で発生した謎の高温の調査に向かう。ご意見無用!! 以上!!」 荒木は今までに経験した事のない凄まじい不安を感じていた。
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