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むせかえる 匂いと
いつまでも
いつまでも響く、その音に。
いつも、私は溺れてしまいそうだった。
―――――――――
陽が沈んで暗くなり始めた校舎の中は、シンと静まりかえっていた。
聞こえるのは、降り続ける雨のサァサァという雨音。
自分の息遣い、遠くにまばらに聞こえる人の話し声だけだった。
季節はもうすぐ夏をむかえようとしていて、じっとしていても湿り、ねっとりとからみつきそうな空気の中を彼女はどこか虚ろな表情で音楽室にたたずんでいた。
防音の壁のこの部屋でも、ガラス窓を叩く雨音だけは凌げないのかとため息をつく。
――どこか、遠く・・・・・・
誰も知らない、誰もいない場所に逃げてしまいたい。
「・・・ひより・・・?」
ふいに掛けられた控えめな声色に、彼女――津高 ひより は振り返り小さく笑みを浮かべた。
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