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「わたし、ひよりの髪を撫でるのが好きです。」
ぴくり、と小さく揺れる肩に香苗が小さく笑った。
「ひよりの、人よりちょっと冷たい手も好きです。」
縋り付くような手が、香苗の制服を握る。
「ひよりが、わたしだけに笑ってくれるのが好きです・・・・・・ねぇ、笑ってください。」
小さな子を宥めるようにポンポンと背中を叩く香苗の言葉に、スンッと鼻をならすとひよりはおずおずと顔をあげて彼女の顔をのぞきこんだ。
「香苗は、私から離れていかない?ずっと隣にいて、そばでこうやって手を握っていてくれる?」
先ほどまでの大人びた雰囲気からは想像つかないほどに幼く見えるひよりに、香苗は握っていた手を両手で包み込んで真っ直ぐにひよりに笑いかけた。
「ひよりがいやだって逃げ出しても、わたしがいやだって逃げ出すことはありません。」
まだ、不安げなひよりに言葉を続ける。
幾度も繰り返した言葉だけれど、と彼女は一度そこで言葉を止めた。
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