死ぬ時は一緒だよ

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 どんどん森の奥へ。僕の足は疲れを知らないらしいな。どうやら僕は、君のためなら何だって出来るみたいだ。足の疲れが無い事は、その証明になっているだろう? さあ、だから早く僕の所に戻って来なよ。僕はこんなにも愛しているのだから。  時の経過が分からなくなるまで僕は叫び走ったよ。喉なんてとうの昔に潰れて、声が殆ど出ないんだ。多分、三日三晩はずっと走り続けて君を探しているけれど、やっぱり君は何処にもいないんだ。そんな形跡すらも全く無いんだ。  でもね、やっぱり僕は君のためなら何だって出来るみたいなんだ。今だに僕の足は疲れを知らないし、僕の胃袋は一切弱音を吐かないよ。凄くないかい? これこそ人の神秘だと思わないかい? ああ、でもね。そんな凄い神秘を発見したって、やっぱり僕は満たされないみたいだ。僕の全部が君に飢えているみたいなんだ。早く出てきてくれないかな? そろそろ僕も我慢の限界みたいだ。「ねえ? 君は何処にい、る……ん……だい」掠れた僕の弱々しい声が聴こえたよ。あれ? おかしいなあ。何がおかしいかって、僕の身体が動かないからおかしいんだよ。それに、どうやら僕は倒れてしまったみたいだ。おまけに、何だか僕は眠くなってきた。駄目だよ! もうちょっと頑張ってよ、僕の身体! そんな声にならない心の叫びが、遠くで聴こえた気がしたんだ。  僕の魂はどうにもしぶといらしいな。成仏できずに、現世に繋ぎ留められたんだ。それもこれも、僕の君を愛するが想いの故。僕は君を見つけられないままは、死んでも死にきれないよ。  それからまた暫く、僕は樹海を魂の形(なり)で探し回ったさ。でも、やっぱり君はいないんだ。さすがの僕も諦めて、僕と君の家に戻ったんだ。家が見えてきた段階でね、僕の魂には一つの疑問が浮かんだんだ。その疑問が何かって言うとね、家に灯りが付いているって事なんだ。最初、僕は考えたよ。僕が家を飛び出す時に、付けっぱなしで出て来てしまったんだって。きっとそうだ! 何となくの確信が僕にはあったのさ。
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