死ぬ時は一緒だよ

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 でもね、そんな確信は見事に打ち砕かれたんだ。家の中に居たのは、紛れもない君だったんだ。それはもう、気を失う程の驚きだよ! まあ、幽霊の僕には気を失う事なんて無いけどね、恐らく。  冷静に君を見てみると、檻の中に閉じ込めていた時の姿なんかとは全然違っていたんだ。多分、お風呂にでも入ったからだね。艶やかな肩まで伸びた髪、壊れてしまいそうなほど華奢(きゃしゃ)な手足、スラッとした顔立ち。全てが僕を虜にするよ。今にも、僕の魂は張り裂けそうだよ。  それに、君は頭が良いね。僕は君に出し抜かれたんだ。君の思惑通りに、僕は死んじゃったんだ。多分、最初から家の中に隠れていたのかな? そうやって僕を焦らせて、僕を森の中へと駆り出したんだね。一度入れば、戻って来る事なんてできない樹海だもんね。僕の思考を知り尽くし、綿密に計算した策略だよ! 見事だ! 君は凄いよ!   でもね、君は一つ計算ミスをしているよ。僕の願いは、一生と言わず永遠に君と一緒にいる事なんだ。そこら辺は君の読みが甘かったのかな? だから君は僕が死ぬ事で解決したと思っているんだね。だから、そんなに悠々と料理なんか作って鼻歌を口ずさんでいるんだね。でも、僕はそのメロディーを知らないなあ。何処で覚えたんだい、そんな歌? 僕に会う前かい? そんなに楽しそうに歌っている所を見ると、よっぽどその歌が好きなんだね。知らなかったよ、君がそんな歌を好きだった事。結局、僕は君の全てを知っていた訳じゃ無かったんだね。  そうそう。君が計算ミスをしているって話だったね。僕の願いが君と永遠にいるって話はさっきしたよね。という事はだよ? よく考えてみて。死んだ方が君の隣に居やすいと思わないかい? 触れる事が出来ないのは惜しいけど、君と永遠にいられるメリットは大きいね。  おや? だんだん顔が強張ってきたね。僕の話を聞いて怖じ気づいたのかな? でも、もう遅いね。こうなってしまったのも、全然君のやってしまった事が原因なんだよ。  その気になれば、僕は君を呪い殺す事も出来るんだ。君は、僕の好きな時に死ぬんだよ。君の運命を握ってしまったのと同然だね。ああ……、興奮してきたみたいだ。僕の魂が今までにない程疼(うず)いているのが分かるかい? おっと、君も遂には悲鳴を上げたね。でも、そんな事したって意味が無いよ。  君は既に、僕と運命共同体なんだから。
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